STEPの前につくられた「TAYORI」。家庭の中の情報編集ツールとして、積水化学工業の依頼で製作。

 「EditTableがパレットなら、SYNLAはカウンター。カウンターに並ぶいろいろな情報を、あるカリキュラムに沿って見ていくことができる。これに対して、デジカメで撮った学校周辺の植物など、自分で撮った写真を載せ、説明を書き、カードをオリジナルで追加することもできます。カードの文字量と画像の重さをある程度の単位に揃えておくだけでいい。しかも、出来たものをこのままHTMLに吐き出せるんですよ。」
えっ?HTML化できるということは、web上に公開できるということですか?
「そうです。web上で公開されたものは、PADがJAVAに置換えられているので、IPのソフトを持っていない人も作品を見ることができます。全体として、MIYAKOのようなある情報の体系から必要な情報を選び出し、足したり引いたりしながら伝えたいものが伝わるように組み立て、最終的に公開するという流れですね。」
 
EditTable
「なっとくボード」の画面。自由にレイアウト可能。
3つのカードを配置した「はっとくパレット」。
 



さまざまなソフトが並走しつつ、有機的に連携し合うSTEP。なかでも学習向けに強化したEditTableは、やはり学校関係者からかなり注目されているようです。
「ある学校では、PowerPointを使って調べ学習をしていたのですが、あまりに自由度が高過ぎて、操作のテクニックで学習の差が出てしまう。その結果、先生は生徒が何を調べて、何を編集したのか分らなくなってしまったんですね。EditTableの構造は、どういう情報をもってきて、どう組み合わせて、何を考えたのかがわかる構造にしているので、先生方にはそこがよかったのだと思います。」

先進的な教育ツールを取り入れている箕面市(大阪府)は、EditTableのそうした特徴に注目、市内の小、中学校合わせて17校にEditTableの導入を決定し、2003年度に大規模な実験授業が行われるそうです。授業では太田さん自身が教壇に立ち、編集ノウハウ含めて指導するとのこと。金沢の中学校でも同様に実験が実際に行われる予定です。



MIYAKOや編集の国以来、情報単位をつくり、相互に連結させるというIPならではのアイデアを、学習プロセスの明示へとつなげた編集工学研究所の取り組み。情報という捉え難いものをいかに目に見える姿として示し、ハンドリング可能なものとして、編集という舞台へ送り込むか、太田さんたちはずっとそれに取り組まれているように感じました。
「IPを使ったツールを数々つくってきましたが、今後はこれらのツールをサポートする人材育成が大切です」と次なる方向性を語ってくださった太田さん。ソフトの中だけではなく、人間との連続・連携・連結を視野に入れるその根底には いつも“情報はひとりじゃいられない”があるように思います。そうですよね太田さん!