IPC発足後、IPがスムーズに流通するための仕様を標準化する標準化委員会や、普及活動を行う教育普及委員会等が活動を開始しました。
標準化には2、3年かかり、第1版、そしてそれを改定した第2版が作られました。ところがそのIPの多様な可能性を十分に発揮できるコンテンツが無い!!デモといえば最初に田中譲先生のところで見た、日本地図の上に棒グラフがあって、数値を入力すると棒グラフが動くものしかありません。「社内では地図と棒グラフだけで何が出来るんだ、と散々悪口を言われましたよ。」と田中さんは苦笑しながら当時のつらい心境を語られました。
早く応用を見せなければという焦りから、IP本体に棒グラフや文字列や画像を出すパッドを4、50種類つけてだしたそうです。ところがこれでも、買った人は何をしたらいいか分からない。「富士通さんと一緒にWindows版、Mac版、そしてWorkStation版まで出したけれど、思ったようには広がっていかない状態が続きました。そういった意味で、普及は十分ではなかったのだと思います。」と田中さん。
しかしその後、転機が訪れました。多摩美術大学の先生が、Mac版を使って、棒グラフだけを組み合わせて、モンドリアンの思想と作品をモチーフにしたデザインを行う、というユニークな試みを行ったのです。「PADを300も400も貼って作っていたのに驚きましたよ。こんな使い方もあるのか、と思いましたね。違う感覚を持った人が見ると、またそれだけ使い方が増えることに気付きました。」と田中さん。
その頃、IPのライセンス管理システムに関するプロジェクトが立ち上がりました。IPCの有志が集まって、情報処理振興事業協会(IPA)の97年度の公募に提案したところ、そのシステムが採択されたのだそうです。
IPは様々なコンテンツを持ったパッドが再編集・再流通されることによって、ミーム・プールという知識や知恵を蓄積する場が形成されることを目指しています。しかし、企業側にとっては使用する際にコンテンツを買ってもらわなければ生きていけない、又、コンテンツの製作者側にとっても、自由にコピーされては生きていけない、といった現実問題もあります。「自由にコピーしてもいいのだけど、使う時はちゃんと対価を払う、といったように、きちんとライセンスを管理できるシステムが必要だという話題は、実はIPCが始まった直後、もしくはスタートする直前に既に出ていて、分科会等を作って検討していたんです。」と田中さん。
その後、ライセンス管理システムを全てのIPに導入できるようにした。無料で使っていいという製作者はその対価をゼロにし、又、どんなものか分からないものにお金を払うのは嫌だというユーザのためには一定期間お試しで使える、といったようなしくみが開発されました。
「ライセンス機構に取り掛かったあたりから、つまり90年代後半、IPがコンテンツをその中に抱えて流通していく媒体でもあり、それを組み合わせて編集して何かを作り出すツールでもあるという視点でやってきました。その結果として、『カムイミンタラ』が出来たんです。」
『カムイミンタラ』はIPによるコミュニケーションの場を作っていくために日立ソフトが開発していた試作品で、ピアッツァ(Piazza)のコンセプトに基づいたネットワーク上の広場と、誰でも簡単に使える編集環境をセットにした多機能なものなのだそうです。これがあの『きりはり教室』の前身だったわけですね。
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