WebとPadを連携させたしくみを丁寧に説明してくれたのは、研究者の伊藤さん。
伊藤「タグ単位で囲まれたものなら、すべてWebから切り取ってPad化できます。」




川原: ここまで田中先生に説明していただいた「ミームプールとしてのPad」というものを、今度は実際のWebを使って編集操作を見せてもらいました。とにかく目の前で、多様なコンテンツを切り貼りして新しいPadをつくっていく様子に驚きの連続!目からウロコが落ちるってこういうことなんだなぁ〜と、つくづく実感していまいました(笑)。
吉田:デモをしてくれたのは、北大で研究をされている伊藤さん。まずは「ライブドキュメント」といって、Webのドキュメントを自由にパッドに置き換える操作を実演してもらいました。例えば天気予報のページで温度の部分だけを切り抜いたり、明日の天気を切り抜いて、自分のページにそのまま貼ったり出来る。
川原:しかも、切り抜いた部分は、元のサーバを介して、つねに最新の情報に更新される。自分の見たい地域の天気情報だけを切り抜いてくれば、3秒ごとに情報が更新されるんです!操作方法の説明も、視覚的でわかりやすかった。まるで、ハサミと糊を使って自分のアルバムにぺたぺた貼るという感覚でしたね。
吉田: パッドでつくられたものでなくても、パッド部品としてもってくることができるんだね。さらに、自分で新しく機能を追加することもできる。例えば、日経平均株価の数値を表示しているWebの部分を、数秒ごとに更新させながら棒グラフとして表示するとか。
川原:既存のサイト検索のサービスを抽出した、「検索TOP3」というデモもありました。田中先生はこれを「サービスの編集」と呼んでいて、その言葉がとても不思議で、印象的だったなぁ。
吉田:操作方法があまりに簡単で・・・。まず、既存の検索サイトのページにある検索入力部分と、検索によって出てきた上から3番目までの部分をPad化して抜き出し、新しいPadをつくるだけ。すると大量にヒットする検索結果の余計な部分をカットできて、評価の高い順に3つのサイトのURLだけが表示されるサービスパットが出来上がる。さらにURLの表示領域のパッドを、プラウザパットに変更してやることによって、検索すると同時に、TOP3のページの内容が表示されるような便利なサービスパットも作成可能となる。
 
 
Padを利用した「サービス編集」、目からウロコが落ちるほど驚いた。





川原:伊藤さんのデモを見ていると、「IPで本当にこんなことができるの!?」と思うことだらけ。データや画像だけでなく、サービスまでパッドにして持ってくることができるなんて!私なら、旅行するときに行きたい目的地の地名を入れるだけで、そこの週間天気、気温、交通機関の種類、時刻表、名所、宿泊施設など、自分の好きな情報だけで組み合わせた、そんな自分だけのサービスパッドを作ってみたいなぁ。
吉田:案外、簡単にできるかもしれないよ。タグ単位で自由に切り貼りできるので、テキスト・データ・写真・映像・サービスなど、すべて同じように編集できるからね。例えば、「何かを検索して、その結果で得られたデータをエクセルの表にする」などという作業もひとつのパッドで実現可能だよね。
川原:ルーチンワークをIPで処理できるというメリットが嬉しい。大学の課題なんかも、パッドを使えば便利そうですよね〜(笑)。
吉田:また、そのような個人個人が新しくつくった合成サービスをHTML化することもできる。これを「フラットニング(平坦化)」と呼んでたけど、これができれば情報の流通・再配布も達成できて、まさにパッドがミームプールとして活躍できる、というわけだね。
川原:この後、インテリジェント・ボックスを見せていただきました。Padの3D版ですね。シーズ・ラボの柏崎さんに見せてもらったマジック・キューブと同じ考えですよね。日本地図上に地域別のキャベツの生産量や漁獲高が3Dグラフで表示されるデモでは、長野に近づくと長野の過去から現代までの生産高の移行を示すグラフが登場するなど、色々な角度、視点から情報を見ることができて、新たな発見や多様な分析が可能になる。
吉田:編集工学研究所と一緒に進めている歴史事象を3D空間に表示する「クロノス型システム」は、ゴッホの個人史を立体空間で見ながら、別の窓からのぞくと、ゴッホが生きていた時代のフランスの主要な歴史事項の新たらしい窓が開いたり・・・これは何かに似ているぞと感じたんだけど・・・そうそう、アマゾン・ドット・コムのリコメンデーションシステムだ。開発の現場で感じた「余力をクリエイティブな方向に」持っていけるというPadの特性は、サービスを利用する人にも当てはまると直感しました。
川原:Webコンテンツを持ってきてサービスを編集する、さらにそれを再流通する。データ間のつながりや関係を多様に表現する。IPはいったいどこまで行くんでしょう・・・。