田中「パッドは、Webをベースにした形でようやく完成されている。」
 




川原:田中先生によると、開発当初、IPは多様に解釈されて、誤解された時期もあったそうですね。でも、そんな"受難の時代"を乗り越えて(笑)、田中先生が当初に思い描いていたものはほとんど実現したと言っていました。その一番の成果はやはり、「Webとの連携」だって・・・。
吉田:簡単に言えば、「Webブラウザそのものを包み込んでパッド化する」ということに成功したわけだよね。これは、パッドの普及において、強力な武器になる。そもそもコンテンツ流通には何かと問題の多いWebの世界だけど、逆にその世界から、コンテンツやサービスをラッピングして、再編集したものをまたWeb世界に還元してやる。そうすることで初めて、編集ツールとしてのPadが、ミームのループを完成させることができた。
川原:ただ、Webとの連携については、著作権問題がついてまわるよね。それをまず解決しなければならないと先生も話してた。例えばWeb上のサービスをパッド化して再構成する場合、URLを持ってきているだけなので、実際にはサービス自身をコピーしているわけではない。けれども、デザインで料金を取っている人がいる場合どうなるのだろうか...とか考えはじめると・・・。
吉田:著作権問題については、98年あたりからずっと研究を続けているそうですが、Viewingの編集が著作権上で問題があるのかどうか・・・まだまだ議論がありそうだね。いずれにせよ、Webの世界が、一方向のみからの情報発信の場だったものから、双方向の文化共有になることに、歯止めをかけてほしくないなぁ。
 
田中「究極の理想は、ペンを紙の上にもってくるだけで、Web(情報)とつながるようなもの。」

田中「IPの今後の課題は、1、コピーライト、2、トピカ、3、キーワードの3つの研究。」
 




川原:「今後のIntelligentPadにおける問題点や課題点を挙げるとすると、3つある。」と田中先生は言っていました。一つめは、先ほども出ていた「コピーライト問題」。二つめは、「トピカ研究」、そして最後に、「キーワード研究」だと。
吉田: コピーライトに関しては、特にビジネスモデルを考える上では避けて通れない問題だね。二つめの「トピカ」は聞きなれない言葉だけど、簡単に言うと「情報の持つ場所」や「場所による情報の意味の違い」を研究するという意味なのかな。IPの可能性や未来を語る上で田中先生がとても重要視していました。
川原:最後のキーワード研究だけれども、これはWebの中にある数ある情報から、どのように、何を選ぶのか、という問題ですね。
吉田:キーワード研究をもっと広い視点で言えば、「私たちは情報をどう記憶するのか」というところまで行く。さらに、トピカとも関係してくるけれども、Art of Memory(場所を使った記憶術)ということを考えていると田中先生はいってたよね。
川原: この3つの課題を研究しながら、最終的に田中先生がめざすのは?と聞いてみたら、「自分は科学畑出身だから、やはり科学技術を流通させること」だと応えてくれました。確かに、次から次へと生まれる最先端科学技術だけど、世の中にある有効な技術が本当に私たち人類に共有されているのかどうか、分からないですよね。




吉田:最後に、田中先生のPadへの思いを語ってもらいました。すると、「15年間も同じIPというテーマで研究し続けているけれども、まだまだPadは限界が見えない」という話をしてくれました。確かに、理系の学問を研究していると、次々と新しい分野や解決法や問題点が出てきて、テーマを数年でシフトするようになるからね。
川原:15年も同じテーマで研究するなんて、本当に珍しいと言っていましたね。それほど、IntelligentPadには可能性が秘められている、ということなんでしょうね。
 
田中「体力が続く限り(笑)、今後もIP研究をずっとやっていくでしょうね。」