宮岡 靖(日立ソフトウェアエンジニアリング)


−− IPCの夜明け前 −−



私がIPと出会ったのは、確か、1988年の秋の名月の夜であったと思います。 月の冴え渡る北海道大学のキャンパスの中を田中先生と一緒に帰る途中、先生がIPの 構想を熱っぽく話してくれました。お聞きした時は、夢のような構想に思えて実現に はかなり時間がかかるなという感じがしました。しかし、「C言語など手続き言語で いつまでもシステムを開発していると、ソフトウェア産業は行き詰まってしまう、プ ログラミング依存の体質から脱皮しなければならない。」と、つねづね考えておりま したし、日本発の画期的ソフトが出て欲しいと思っていたところでしたので、田中先 生の構想に賛成し、構想の実現のお手伝いをさせて頂くことにしました。

最初は、富士通、ソニー、日立ソフトの技術者が参加し、IP研究会を田中先 生の指導の下に開催し、どんなPADが必要なのかの検討から、地道な研究活動を行っ て行きました。それから4年の月日が過ぎた1993年3月のある日、TED4 KobeにIP を 発表しないかという話しが入ってきました。このTEDという会議は、Technology, Ent ertainment, Designingが一体となって、初めて新しい時代が開拓出来るというRicha rd Wurman氏の提唱のもと、上記3分野の世界の専門家が一堂に会し議論する会議で 、神戸会議は4回目でした。こんな素晴らしいチャンスはないということで、そうそ うに参加することにした訳です。この会議では、田中先生によるビデオを使用した2 0分の発表とともに、展示も行う事になり、事務局の配慮で十分すぎるスペースを用 意して頂けることになりました。しかし、このためには、2ヶ月間という短期間のう ちに、相当の準備作業が必要でした。研究会に参加している各社の支援は勿論ですが 、札幌市にも支援を受けようということで、札幌市役所の秋元さんと面会し、IPの構 想をお話したところ、非常に前向きに対応していただいたばかりでなく、イエローペ ージの野村社長など札幌市の若手事業家を紹介していただき、話しはトントン拍子で 進行しました。特に、発表用ビデオは、野村社長のお子さんをモデルに、無償で作成 して頂きましたが、このビデオは、非常にに好評で、皆さんご存じのものです。さて 、1993年5月に開催されたTED4 Kobeで、IPは大盛況で、Bill Atkinson (元Gen eral Magic 会長)以下国内外の沢山の参加者が興味を示していただきました。また 、この時、IPを世界に普及すべく、IPコンソーシアム設立準備会委員会を結成し、展 示は、この委員会のもとで実施いたしました。また、翌月の6月に、富士通と日立ソ フトで、IP製品化の発表、さらに7月には、IPコンソーシアム設立総会が開催され 、IPCは大海原に船出をした訳です。

それからのIPコンソーシアムの発展には、目を見張るものがあり、現在、4 0余りの企業、組織が参加し、IPを世界に発信すべく努力されており、今後ますます 発展してゆくと確信しております。  田中先生の夢と、情熱から生まれたIPは、今や、IPコンソーシアムの会員の皆さん の夢と情熱の輪の中で、大きく羽ばたこうとしています。ぜひ、世界に大きく羽ばた くよう、これからも努力して行きたいと考えておりますので、皆様の絶大なるご支援 をいただきたくお願いいたします。
以上
98年1月掲載

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